ANALYSIS REPORT
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ANALYSIS REPORT
IFSが独自に行っている「気分」に関するアンケート調査によると、今求める気分として多くの消費者が「体感、わくわく感を求めている」と答えている。デジタル化が進む反動からか、消費者はどこかでリアルの熱さを求めている。だからこそ今、ライブエンターテイメント業界が熱い。CDの売り上げ不振、テレビ視聴率や映画興行売り上げの低迷など、一見苦戦を強いられているエンターテイメント業界だが、そんななかリアルに表現されているライブや、舞台、イベント、体験ゲームなどは過去最高の動員を記録、関連商品も好調に売り上げている。消費者の関心は明らかに「ライブ」に向き始めている。
音楽の「ライブ」だけでなく舞台、コンサート、イベント、体験などすべて含めたライブエンターテイメント市場を探りつつ、消費者の真意を探る。
じわりと盛り上がる「ライブ・エンターテインメント」市場
少し古いデータになるが ぴあ総研から出ている「エンタテインメント白書 2009」によると 2008年のライブ・エンタテインメント5ジャンルの市場規模は1兆1,600億円と、推計を始めた2000年以降、過去最高を更新。2008年の名目GDP成長率(暦年)がマイナス1.6%と日本経済が低迷していた中、健闘を続けている。映画を除く、音楽、ステージ、遊園地/テーマパーク、スポーツ(増加率の大きい順)の4ジャンルで前年を上回る好調な推移を示しているのだ。
特に注目したい点は音楽とステージのジャンルにが前年比4%の伸びを示していること、(※1)音楽コンサートはここ数年前年割れで低迷していたものの、全体の約7.5割(市場規模ベース)を占めるポップスが、動員数で対前年比5.0%増、市場規模で対前年比6.5%増と好調だったことが、音楽市場全体を牽引した。なかでも、海外アーティスト来日公演の活況、国内公演についても、アリーナクラス以上の大規模公演が盛況であったといわれている。ステージ市場では、特にミュージカル(動員数:同5.8%増、市場規模:同7.4%増)の好調が寄与している。
ミュージカルは、劇団四季、宝塚歌劇団、東宝ミュージカルの大規模かつ安定した動員に支えられながら、芸能プロダクションが制作するミュージカルなど新しいタイプの舞台の活況により、この数年間、増加基調を維持している。
たとえば音楽コンサートで言えば、かつて、「おニャン子クラブ」や「とんねるず」を仕掛けてきた作詞家の秋元康氏プロデュースのアイドルグループ「AKB48」が「会いに行けるアイドル」をコンセプトに、専用劇場でほとんど毎日公演を行っている。この興行収入だけでも十分なものだが、さらにメディアを通した遠い存在だったアイドルを身近に感じさせ、その成長していく過程を含めてファンに見てもらう、アイドル・プロジェクトというものを次々と企画した。ファン投票による出演者オーディション「AKB48選抜総選挙」など独自の企画は「AKB商法」と巷で言われるようになったが、どう言われようとプロデュース側が仕掛けたこの商法は、ファン心理とマスメディアの特性をうまく活用した「戦略・戦術」といえる。
またステージ市場で言えば、二年連続でレコード大賞を受賞している14人組のヴォーカル&ダンス・ユニットEXILEが2009年に劇団EXILEを立ち上げ、舞台ステージを数多く実施。彼らが持つファン層を舞台の世界に引き込み数多く動員を記録した。
このようにCDの売り上げが低迷している音楽業界で、ただ聞くだけではない、感じるリアルな試みが確実に新興市場とし根付き始めている。
カンパニープロデュースの時代
ここ10年から20年の潮流として、このようなエンターテイメントに置けるトレンドはカンパニーパワーというところからプロデュースパワーに変化していた。日本のエンタテイメントを大きく支えてきていたのはいわゆる企業=劇団の力であってカンパニーが持つ資金、劇作家、演出家、役者で構成された自主興行や売り興行がパッケージとなって、地方公演を主な発表場所としていた。劇団四季や宝塚、N響などもその一例だ。
しかしその後そのカンパニーパワーを用いた公演よりも公演のたびに演目にふさわしい演出家、振付師、役者を集めて開催されるプロデュースパワーが要となるやり方がメインとなった。もちろんこのやり方は核となるプロデューサーが重要なわけだが、従来の固定的なカンパニー公演よりもさまざまなジャンルからクリエイティブな才能が集められ、ハイレベルな演目が次々と生み出されていった結果、さまざまなコラボによるジャンルや国境を越えた新しいエンターテイメントが輩出され、固定化された客層というイメージを払拭した。
しかしこうしたプロデュース公演は相互に刺激しあって新鮮な感動を生み出す反面、さまざまな軋轢や失敗も多く見られるようになった。たとえば異ジャンルとの交流により互いのビジネス感の違いや著作権などの問題が浮上し、今までほとんど交わされなかった契約書や覚書などが必要となったり、前例のない取り組みゆえ、収益の予測が大きく外れ大失敗となるケースも頻発した。そのリスク回避ともいえる、最近多く見受けられるのが、「カンパニープロデュース」だ。
業界内外ともに力のある企業、団体が独自のネットワークで選りすぐりの才能を集め(もしくはオーディションをし)プロデュースするというやり方だ。そのほうが揉め事の多い面倒くさい“作業”も企業力により解決される。劇団EXILEも実際の演目は劇団内だけで行うわけではなく、他劇団との共催や、団員の他劇団出演、オリジナルドキュメンタリーDVDと連動した舞台など、上に立つ芸能事務所LDHとその社長であるEXILEメンバーのHIROがプロデューサーとなってエンターテイメントを創造している。また、テレビ局などが事業部を立ち上げ数多くのライブやイベントなどをプロデュースして(ルナレガーロ、シルクドソレイユなど)、成果を挙げる例も出ている。このようにそれぞれが独自に持つ企業パワーと、他との差別化、新しさのあるプロデュースパワーの組合せが実現されるようになり、ようやく日本にも世界に誇れるエンターテイメントが生まれるようになってきたのだと考えられる。
ライブを求める消費者心理とは
昨今のライブエンターテイメントの盛隆は提供側の変化だけでなく消費者側のマインドの変化、消費スタイル、消費性向の変化も大きく寄与していると思われる。こうしたエンターテイメントは消費者欲求の変化がもっとも顕著に表れている事象であると考えられ、それを支えている消費者の欲求の変化を、見ておかなければならない。
なぜ消費者はリアルな体験を求めるのか。
ミッドタウンをはじめとする商業施設開発に数多く携わる三井不動産アーバン事業部佐々木誠氏は、理由としてエンターテイメントに対する敷居が低くなったことと消費者の感覚の変化が大きな要因と述べている。昔は高級なレジャーとしてのライブエンターテイメントがお金持ちの嗜みだったが、テレビやネット、DVDなどの流布、大型施設でのエンタメ装置の導入などにより一般庶民が簡単に楽しめるものとなった。そしてもうひとつ、「達成感を味わいたい」「充実感を得たい」「少しだけ自分の限界に挑戦してみたい」という非日常感を求める消費傾向があると考えられる。
モノが溢れ、ブランドに飽きた女性達が次に求めるものは、「知的欲求の充足」。モノはあふれているがそれを保有する自分自身の能力に対する不安が浮上しているという。
所有欲求から自己実現欲求へ 移り変わる消費者心理
知的欲求の充足を求める女性たちは自分自身を磨く、自分の知性を磨くことにお金と時間を使うようになり(所有欲求) ジム、英会話、ダイエット、英会話などが人気となった。しかし、こうしたことは何らかの「知識」や「技術」を収得するもの、ある意味最初からゴールが見えていて、達成=所有すると満足してしまうものである。しかし次に、日常から離れた未知の経験、感動を求めるようになってきたのだと考えられる(成長欲求)。現代は発展性なく消耗品となる高級ブランドよりも、充実した時間、泣き笑い感動するといった人間にとって一番プリミティブな部分を刺激する、ライブ感が求められる世の中に明らかに変化した。
i-Padの世界的な流行も、そのモノの価値というよりも、その中から生まれてくる世界、新しい情報、知的欲求を満たしてくれるアプリ、そこからの新しいコトとの出会いに期待が高まるからだと言える。またSNSやBlogからTwitterへトレンドが変化したことも、この欲求の変化を裏付けている。SNSやBlogは一方的な情報の提供、結局のところ1対1のコミュニケーションが主であったが、Twitterは一時に大勢のフォロワ―と感情を共有することができ、そこから生まれる見ず知らずの人とつながり、サプライズ体験が人を引きつけていると言える。先のサッカーW杯で南アフリカ大会の日本対デンマーク戦終了直後の1秒間あたりのツイッター投稿数が3283と世界過去最多を記録したように、スタジアムやスポーツバーのように感動を共有する空間がツイッターの中でも広がっており、新たなるエンターテイメント装置となっているのだ。
いま消費者が求めるドキドキ・わくわくをどう引き起こせるか。
非日常体験、未知空間の提供こそが、これからの時代のマーケティングの潮流としておさえておくべきポイントである。人間のプリミティブな部分を刺激し、やってみたい、買ってみたいと思わせる能動的なマインドを引き起こす、プロデュース力が求められる。
※1
音楽コンサート:動員数2,440万人(対前年比2.8%増)、市場規模1,503 億円(対前年比3.9%増)
ステージ:動員数2,325 万人(対前年比3.4%増)、市場規模1,671 億円(対前年比3.9%増)
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