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今年の冬は長かった。ずいぶん長く冬眠していて目覚めたらまた寒さがぶり返し、今度は春眠? 元気に動き始めるためにエネルギーを補給しなければ!
卵は目玉焼き、こんがり焼けたトーストにはバターとレンゲの蜂蜜、バナナ&ミルクのフレッシュジュース、そして新鮮な野菜には、友人からもらったばかりの手絞りのオリーブオイルと天然の塩を添えて…。この塩は伊勢・二見ケ浦の海から汲み上げた海水をじっくり煮詰めた「岩戸の塩」。古の昔から伊勢神宮に献上されてきたという手作りの塩は、カルシウムだけでなく身体を浄化してくれるミネラル分を多く含んでおり、味は優しくまろやかで、色は花粉を思わせるきれいな黄色をしている。
2011年のカラー・トレンドを模索する過程で、昨年サンプリングしたカラー・マテリアルにも黄色が非常に多かった。私がトレンド予測をする最初のステップでは、理屈ではなく自分のアンテナが自然に反応するモノをサンプリングし、次のステップでその選択の理由を自己アナライズする。今回これだけ黄色のモノを選んだ(インスパイアされた)のは、エネルギー源を切望していたからであろう。長引く閉塞感のなかで人々の気分は抑圧からの開放を願い、厳しい現実に立ち向かうポジティブな力を求めている。そのためには身体が必須の栄養素を必要とするように、気分も滋養を求めているのだ。
滋養のある食物には黄色が多い。また自然の潜在力と深く関わった作品創りをするアーティストの作品にも黄色が多く見られる。ドイツ人アーティストのヨーゼフ・ボイスは、生成り色のフェルトの他、クリーム色のバター(脂肪)と透明感のある深い黄色の蜜蝋を作品の主要素材として繰り返し使っているが、彼はこれらが生命の必須要素と考えていたからだ。
この数年クールな色調がファッションの主流として続いてきたが、これからは温かみのある色に緩やかに方向転換するであろう。滋養のある卵の黄身や蜂蜜などの象徴的なイエローだけでなく、他の色相においても黄色味を帯びた自然で柔らかい色調の浮上が注目される。
しばらく日本よりも暖かかったパリも再び厳しい寒さがぶり返し、氷点下で雪が降り続くなか、2月9日から12日までの4日間、プルミエール・ヴィジョン2011年春夏展が開催され、早くも来春夏向けのテキスタイル・ビジネスが本格的にスタートした。
プルミエール・ヴィジョン展は世界のファッション業界で最も注目されるテキスタイル見本市である。その所以は、各社のブースで繰り広げられる商談のみならず、会場で様々に発信されるトレンドが、1年先のファッション傾向を予測する上で重要視されているからである。欧州を中心に645社のテキスタイルメーカーが出展しているが、日本からも24社が出展している。
しかし長引く不景気のなか、来場者は昨年同期よりも増えたというものの、会場には以前ほどの活気は戻っていない。加えて連日降り続く雪のなかでの開催で、気分も冷え込んで会場に入った人が多かった。薄く雪に覆われたエントランスに誘われて会場に入ると、確かにそこは白い世界だった。気分が白けたのではない。会場内の各社ブースの壁面から什器まで、すべてが白いマテリアルでまとめられた「ホワイトシティ」へとデザインが一新されていたのだ。白いマテリアルにはデュポンのコーリアンという新素材を採用し、乳白色を別注したそうだ。光を優しく透過するこの素材は、今までの木目を基調とする重厚な雰囲気を、ライト&ライト(明るさと軽さ)なオープンな空間にリフレッシュした。抑圧された閉塞感から開放されて気分が良かった。
このホワイトシティに映えたのが、今回のプルミエール・ヴィジョンのオリジナル・トレンドカラーだ。この数年の傾向を引き継いでカラフルだが、蛍光色まで登場した昨年までとは異なり、透明感のある爽やかなカラフルさに推移した。それらを引き立てるベースカラーも、爽やかなホワイトと透明感のある深いブルー。プルミエール・ヴィジョンでは毎日、出展メーカーのブースでバイヤーに人気のあった色や素材がアンケート調査され、翌日には“THE BESTS”として発表されるが、会期を通してのベストカラーは、透明感のあるインクのようなダークブルーとシリコンのようなホワイト。これに続いたのがライト&ライトなカラフル色。
ファッションは世相を反映する、しかしカラーは逆反映し、その時代に生きる人々の、未来への変化の願望や希望を反映する。21世紀の最初の10年間が過ぎようとしている今、新しいノートの白いページを開くように、世紀末ムードが払拭され本当の意味での新世紀が始まることへの期待感の表れである。
機能と創造のセッション
のびのび・ほかほか…?
なんだか通販の陳腐なコマーシャルみたいだが、そうではない。ハイテクが実現した最先端のお洒落なファッションの話である。写真のダウンジャケットがオリジナルの試作品だが、一見すると普通のダウンジャケット、実は着る人の動きに応じて伸び縮みするストレッチ・ダウンジャケットだ。
表側・中側の生地は薄地織物に見えるが、非常に目の詰んだ薄地ニットなのでストレッチ性がある。伸縮性があるのは表面だけではない。ダウンを内蔵する袋状のダウンパックはフィルム・シートとニット・チュールの二重構造で、どちらも伸縮性がある。特殊な多孔構造を持つフィルムは通気性を持ち、快適な衣服内環境を保つ。ニット・チュールも当然ながら通気性を持ち、ダウンのズレ落ちを防ぐ。表側・中側からダウンをはさむ極薄素材の6層構造が、軽くて暖かいダウンジャケットの条件を満たしつつ、身体の動きと親密に寄り添って自由な快適性を実現する。これは機能性だけでなく、同時にデザインの可能性を広げることをも意味する。ストレッチ性を想定すればダウンジャケットをより自由にデザインできる。スリムなシルエットやディテールにも遊びのあるデザインを展開できるのだ。そのためには服作りに不可欠な付属品も重要である。今回のオリジナル試作では、ファスナーにも新開発のストレッチ・ファスナーを使った。テープ部分だけでなく閉じる役目をする肝心の「歯」の部分も、テープに同調して伸縮する画期的なファスナーである。丸ごと伸び縮みするアイデアは、アウターウェアだけでなく軽快なトップスやボトムにも対応できる。また今後は衣服だけでなく、他のジャンルにも展開できるだろう。
私は10年以上前からJFK(Japan Fabric Knowledge)プロジェクトを通して、優れた日本素材をヨーロッパのデザイナーブランドに毎シーズン紹介しているが、昨年は定例の日本素材プレゼンテーションの際にストレッチ・ダウンジャケットも紹介した。ストレッチ・ダウンジャケットの魅力は実際に着てみないとわからないので、男女を問わずプレゼン相手に試着を勧めた。私自身、最初に着てみた時に本当に驚いた経験を持つからだ。1サイズ、いや2サイズは小さなジャケットを試着したのだが、身幅が狭く袖丈もつんつるてんなのに肩や腕が自由に動かせて感動したのだ。案の定、最初は躊躇した大柄の外国人デザイナー達も、試着してみて一様に目を見開いた。その結果、生地やファスナーの問い合わせやサンプル依頼が続出。今年の秋冬シーズン、ヨーロッパのデザイナーブランドの店頭でどんなデザインのストレッチ・ダウンジャケットを見られるのだろう。もはや「のびのび・ほかほか」だけでなく、「いきいき・わくわく」のファッションになるだろう。楽しみだ!
昨年、東京と京都で、アーティスト平野傑(ひらのつよし)さんのライブペイントを見た。
見たと言うより楽しんだ。
床に絵の具を置き、壁いっぱいの大きな白いキャンバスに向かい、
すべてのオーディエンスの双眸が注がれる緊張のなか、
時には絵筆を咥えながら平野さんが数時間かけて描く。
休憩の間はリラックスして、飲み物を片手に平野傑さんや会場に居る人達と会話を交わし、
また背筋を伸ばして観客に戻る。最後の署名入れで作品完成!
東京では明るい照明のモダンなアートスペースでの心浮き立つパフォーマンス、
京都では西陣の古い町家の暗い土間で行われ、津軽三味線の生演奏ともあいまって、しっとりした趣。
作品はどちらも平野傑さん独特のエスプリ溢れるペインティングだが、それぞれ印象が微妙に異なった。
時、場所、そこで表現するアーティストの感性、そしてそれを受けとめる鑑賞者の気分…、
これがライブペイントの面白さだ。
「ライブペイント」という言葉からは、戦後アメリカの抽象画の旗手、
ジャクソン・ポロックの「アクションペインティング」を連想するが、その過激さとは無縁だ。
どちらも描く過程が意味を持つが、キャンバスと格闘するかのように
絵の具をスプラッシュ(飛び散らせ)し、ドロップ(垂ら)し、
表現者の内面をぶつけてくるアクションペインティングとは異なり、
ライブペイントには球技でラリーを続けるような双方向感覚がある。
これは現代が求める爽方向を伝えるコンテンポラリーな創方向なのではないだろうか。
ちなみに京都では、休憩中に、前から気になっていたこと
『平野傑さんがいつも描く不思議な女性像に特定のインスピレーションがあるのか?』を
平野傑さんにおそるおそる聞いてみたら教えてくれた。
うーん、なるほど…。でもここでは内緒にしておこう。
Auto Color Awards 2010
心を魅了した車の色
「オートカラーアウォード 2010」の最終審査が行われた。第一次審査で残ったノミネート車が文化女子大学の中庭にずらりと勢揃い。車を囲んでの最終プレゼンテーション、各車の前での質疑応答、また実際に車に乗り込んで体感する乗り心地や、車内から見る外の状景…。やはり実車のインパクトは違う。惜しくもここに残れなかった応募色も、実車で見たら評価が変わっていたかも知れない。そう思うと少し心が痛んだ。
ノミネート車の前でプレゼン、その時デザイナーの手は震えていた! 寒風のせい、それとも緊張から?
オープンカーの開閉デモンストレーションは合体ロボの変身のようでワクワク!
私が委員を務めるグランプリ・ファッションカラー賞審査委員会では、今年もなかなか結論が出ず、全員で部屋を出て最後にもう一度実車を見てようやく決めた。納得の結果である。
グランプリは「日産・フェアレディZ ロードスター」のディープマルーン、ブラックローズの妖艶な華やかさを思わせるグラマラスなボルドー色。
ファッションカラー賞は「ホンダ・アコードツアラー」のコバルトブルー、水に濡れたようなリキッド感を感じさせるインテンス・ブルー。
また審査委員特別賞は「ホンダ・ステップワゴン」のヒダマリアイボリー。その名の通り暖かさを感じさせるオフホワイト色。ファミリーカーとして人を主役にしたコンセプトが、「陽だまり…」と名付けられた色に見事に凝縮されており、“ライフスタイル賞”というネーミングに選考理由を込めて選んだ。
これら以外に、自動車メーカー・カラーデザイナーがプロの視点で選ぶ「オートカラーデザイナーズセレクション」の部門別4賞、審査会場となった文化女子大学の学生代表達が選ぶ「文化女子大学セレクション」の1賞もすべて決まった。各審査委員会が選ぶ車・色は、オーバーラップすることもあるが毎回概ね異なる。特に今回はほとんど重ならず驚いた。立場や視点の違いは審査するときに響くツボもここまで異なるのであろうか。非常に興味深い。
オートカラーアウォードの過去の受賞車・色を振り返ってみると、その年の時代背景やトレンドが投影されてきたことが明らかだ。今年の審査結果はどんな傾向を表しているのだろうか?ノミネートされたが惜しくも賞に選ばれなかった車も含めてトレンドを分析してみた。
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