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ikenishiブログ

Sweet-Toxic―甘さと毒

蜷川実花の映画監督デビュー作「さくらん」の極彩色の衣裳は、2年経った今も網膜に焼き付いている。絢爛豪華な吉原を舞台に艶やかな花魁が纏う着物の、彩度を極めたちょっと毒のある花々や金魚の柄は、フォトグラファー蜷川実花の写真そのままである。
思いがけず今年の夏、この衣裳を手掛けた京都在住の作家、谷川幸(たにがわみゆき)さんに出会った。平野傑(ひらのつよし)さんのアートイベント「ライブペイント」の会場、京都、西陣の古いしもた屋で紹介されたのだ。京都、西陣、着物作家…とくれば、2時間サスペンスでは和服を着て長い髪をアップした京おんなの登場がお決まりだが彼女は違った。まったりした京言葉ながら活き活きと話す、小顔で手足の長い1981年生まれの“今日おんな”だった。
「さくらん」の衣裳を手掛けたと聞き、新進の着物作家かと思ったらそうではなく、テキスタイルデザインを起点とするアーティストで、着物も彼女にとってはアート表現だと言う。
なるほど!その出発点があの大胆な「さくらん」の着物を可能にしたのだ。
谷川幸さんは、京都造形芸術大学・芸術学部美術工芸学科染色コース在学中に、自分の成人式の振袖を職人さんのもとで自ら創ったことをきっかけに、彼女にとって着物はアート表現のキャンバスだと気づいたそうだ。卒業後、勉強しながら彼女独自の着物を創作し続けるうち、「さくらん」の着物デザインの依頼が来た。32点をデザインし、それらを作る着物メーカーに入って制作にも携わった。古典の着物とはまったく異なる意匠デザインを実現するためだった、と彼女は言う。
独立して自身のデザインオフィスを立ち上げた谷川幸さんは、先ごろ東京・白金のアートスペースART ONIONで個展を開いた。そして今年の12月にはパリで初の個展を開く。古典と現代、工芸と芸術、甘さと毒が絡みあうコンテンポラリー・キモノがフランスで鮮烈にデビューする。

 

 

2009.11.04