昨年、東京と京都で、アーティスト平野傑(ひらのつよし)さんのライブペイントを見た。
見たと言うより楽しんだ。
床に絵の具を置き、壁いっぱいの大きな白いキャンバスに向かい、
すべてのオーディエンスの双眸が注がれる緊張のなか、
時には絵筆を咥えながら平野さんが数時間かけて描く。
休憩の間はリラックスして、飲み物を片手に平野傑さんや会場に居る人達と会話を交わし、
また背筋を伸ばして観客に戻る。最後の署名入れで作品完成!
東京では明るい照明のモダンなアートスペースでの心浮き立つパフォーマンス、
京都では西陣の古い町家の暗い土間で行われ、津軽三味線の生演奏ともあいまって、しっとりした趣。
作品はどちらも平野傑さん独特のエスプリ溢れるペインティングだが、それぞれ印象が微妙に異なった。
時、場所、そこで表現するアーティストの感性、そしてそれを受けとめる鑑賞者の気分…、
これがライブペイントの面白さだ。
「ライブペイント」という言葉からは、戦後アメリカの抽象画の旗手、
ジャクソン・ポロックの「アクションペインティング」を連想するが、その過激さとは無縁だ。
どちらも描く過程が意味を持つが、キャンバスと格闘するかのように
絵の具をスプラッシュ(飛び散らせ)し、ドロップ(垂ら)し、
表現者の内面をぶつけてくるアクションペインティングとは異なり、
ライブペイントには球技でラリーを続けるような双方向感覚がある。
これは現代が求める爽方向を伝えるコンテンポラリーな創方向なのではないだろうか。
ちなみに京都では、休憩中に、前から気になっていたこと
『平野傑さんがいつも描く不思議な女性像に特定のインスピレーションがあるのか?』を
平野傑さんにおそるおそる聞いてみたら教えてくれた。
うーん、なるほど…。でもここでは内緒にしておこう。
2010.01.19

